古い友人から時折電話が来る。
彼は高校時代からの友人で、今もなお付き合いがある。会社をリストラされるなど悩み多い日々のよう
だ。
また別の友人は、殺人的なサービス残業を強いられて帰宅はいつでも深夜だそうだ。
彼らは都会に住んでいるのだが、一見長閑そうに見える私の住んでいる地域でも似たような話を聞く事
がしばしばある。そんな時思い出すのが、前出の友人がかつて私に言った「東京マネー」という言葉だ。
その友人は埼玉県のさいたま市に住んでいるのだが、ひな祭りの頃に近所のおばあさんとこんな事を話
したのだそうだ。「ここら辺は都会だし東京と何も変わりませんね。」「そうだねぇ・・・。でもここらだって土地
の風習みたいなものがあるんだよ。今は外からの人が多いけど、元からの人たちだっているんだから。ひ
な祭りのやり方だって東京とは違うはずだよ。」
友人はこう思ったそうだ。「ここら辺は殆ど東京マネーだからなぁ・・・。でももともとは別の地域なんだ。」
私はその話を聞いて思った。東京近郊だけでなく、もう日本中の殆ど全てが東京マネー(そもそもこの言
葉自体が友人が造った造語なのだが)だ。結局のところ、それから外れたような空気の中で生きているか
どうかは完全にその人個人の気持ちの持ちようだけなのだ。更に言えば生き方次第という事だ。
だがそうは言ってみてもこのご時世、そんな気持ちを持ったりそんな生き方をしたりするのは極めて困難
な事だ。もちろん私にとっても・・・。
夏の休日に窓から外の風景を眺めた。子供の頃からあまり変わっていない風景だ。だがもう、あの頃の
夏には戻れない。
